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【労働×求人NEWS Vol.38】事業主の義務が増えた!!

「通常の労働者への転換」の転換推進が事業主の義務に!
~パートタイム労働者から通常の労働者へ転換するチャンスを整える必要があります!~
パートタイム労働者の中には、通常の労働者※として働くことを希望しながらやむをえずパートタイム労働者
として働いている方々もいます。これは、一旦パートタイム労働者になるとなかなか通常の労働者となることが
難しいということも影響しています。
※通常の労働者とは・・・同一の事業主に雇用される正規労働者(無期雇用フルタイム労働者)3 ページ参照
パートやアルバイトから正社員に転換できる会社というと、「ごく一部の限られた現場」と考える方が多いと思
いますが、2020 年4 月1 日より適用(中小企業は2021 年4 月1 日より適用)された同一労働同一賃金に伴うパー
トタイム・有期雇用労働法には、第13 条として、パートタイム・有期雇用労働者から通常の労働者へ転換するチ
ャンスを整えることが事業主に義務付けられています。

1.パートタイム・有期雇用労働法第13 条に定められた内容
(通常の労働者への転換)
第十三条 事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する短時間・有期雇用労働者に
ついて、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
一 通常の労働者の募集を行う場合において、当該募集に係る事業所に掲示すること等により、その者
が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に係る事項を当該事業所において雇用
する短時間・有期雇用労働者に周知すること。
二 通常の労働者の配置を新たに行う場合において、当該配置の希望を申し出る機会を当該配置に係る
事業所において雇用する短時間・有期雇用労働者に対して与えること。
三 一定の資格を有する短時間・有期雇用労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度
を設けることその他の通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。

パート有期法第13 条では、通常の労働者(※)への転換を推進するため、既に雇用しているパート・有期
社員に対し、①求人情報・社外公募の周知、②社内公募の際の応募機会の付与、③正社員転換のための試験
制度の設置等のいずれかの措置を講じること(義務)としており、予めどの措置を講じているか周知するこ
とが重要とされています。
①の求人情報・社外公募の周知については、正社員に転換してもらいたいと思うパート・有期社員に対し
声かけをするだけでは、本条要件を満たしたことにはならず、全てのパート・有期社員に対し周知する必要
があります。また、自社HP やリクルート専門サイト等で募集内容を公開する場合、全てのパート・有期社員
がいつでもHP や応募サイトを閲覧でき、募集内容を確認できる状況になければ、本条要件を満たされません。
③の措置を講ずる場合、パート・有期社員から正社員転換の要件として、勤続年数や資格要件を課すこと
は可能ですが、必要以上に厳しい要件を設けている場合は、本条の義務を果たしていないものと判断されま
す。
※ 事業所に正規型の労働者(正社員)と正規型以外の無期雇用フルタイム労働者がいる場合には、正規型以
外の無期雇用フルタイム労働者への転換推進措置にとどまるものでは、本条の義務の履行とは言えず、正
規型の労働者(正社員)への転換推進措置を講ずる必要があります。パート有期法でいうところの「通常
の労働者」には、正規型の労働者(正社員)と正規型以外の無期雇用フルタイム労働者のいずれも含まれ
ますが、本条に関しては、正社員のみを「通常の労働者」としている点、ご留意ください。

2.パートタイム・有期雇用労働者の転換制度を設けている企業
(1)正社員転換制度の有無(企業別割合) (単位:%)令和3 年
就業形態
正社員転換制度の有無
制度有り 制度無し 不明
無期雇用パートタイム 41.8 47.1 11.0
有期雇用パートタイム 42.2 49.1 8.6
有期雇用フルタイム 50.1 42.9 7.0
パートタイム・有期雇用労働者の正社員転換について「制度有り」とする企業の割合は、「無期雇用パート
タイム」41.8%、「有期雇用パートタイム」42.2%、「有期雇用フルタイム」50.1%となっています。
また、「無期雇用パートタイム」「有期雇用パートタイム」「有期雇用フルタイム」のいずれかの就業形態に
適用される正社員転換制度がある企業について、正社員に転換するに当たっての基準別企業の割合をみると、
「人事評価の結果」が67.7%と最も高く、次いで「パートタイム・有期雇用労働者の所属する部署の上司の
推薦」が48.8%、「(一定の)職業経験年数」が41.1%の順となっており、「職場内の格付け等級制度におけ
る(一定の)位置づけ」と「筆記試験の結果」については、5.9%、6.0%と低くなっています。
(2)過去3 年間における正社員への転換希望者の有無、転換者の有無別企業割合
①正社員への転換を希望した当該労働者がいた
・ 無期雇用パートタイム 28.1%
・ 有期雇用パートタイム 26.9%
・ 無期雇用フルタイム 33.8%
②実際に正社員に転換したものがいた
・ 無期雇用パートタイム 17.2%
・ 有期雇用パートタイム 14.4%
・ 無期雇用フルタイム 25.6%
③正社員への転換を希望した当該労働者はいなかった
・ 無期雇用パートタイム 48.1%
・ 有期雇用パートタイム 49.5%
・ 無期雇用フルタイム 43.8%
(3)転換推進を行っていない事業主は早急に体制整備に着手する必要がある
2020 年10 月13 日及び15 日に、同一労働同一賃金に関する重要な最高裁判決(大阪医科薬科大学事件、メ
トロコマース事件、日本郵便・佐賀事件、日本郵便・東京事件、日本郵便・大阪事件の5 判決)において、
同一労働同一賃金について定めた労働契約法20 条の「その他の事情」として、正社員転換措置が評価された
ことも注目を集めています。
このような背景から、パートタイム・有期雇用労働法に定められた正社員転換措置の義務化では、非正規
社員の待遇の改善を目指した一定の制度を設けることが、使用者の義務とされました。
【大阪医科薬科大学事件 最高裁判決について(令和2 年10 月13 日判決)】
<事案>
正職員には、通年で基本給4.6 ヶ月分の賞与が支給されるのに対して、時給制のアルバイト職員(期間1
年・3 回更新)には、支給されないことが労働契約法第20 条に違反するとして争われた事案。
<最高裁の判断>
一般論として、「賞与の支給に関する相違が不合理と認められる場合もある」とし、「当該使用者における
賞与の性質、目的を踏まえて、諸事情を考慮して不合理か否かを検討すべき」としました。
その上で、「本件賞与は、正職員としての人材の確保や定着を図るなどの目的で支給するもの」とし、「正
職員とアルバイト職員の間には、職務の内容、配置の変更の範囲に一定の相違があった」、「正職員への登用
制度が設けられていた」などとして、「不合理と評価できない」と結論付けました。
<検討>
契約社員には、正職員の80%の賞与が支給されており、高裁では、アルバイト職員に対して、正職員の60%
を支給すべき旨の判断が示されていたが、最高裁は、不支給も不合理でないと判断しました。
「正社員の人材の確保・定着」という目的を重視した点が特徴的ですが、「正社員への登用制度の存在」な
ども合理性の根拠としてあげられているので、制度設計においては引き続き慎重に検討する必要があります。

(4)通常の労働者の定義は?
パートタイム・有期雇用労働法第13 条では、「通常の労働者への転換」に関わる措置を講じることが義務
化されました。通常の労働者とは正社員のことを指すのではありません。パートタイム・有期雇用労働法で
は「通常の労働者」を「いわゆる正社員を含む無期雇用フルタイム労働者」と定義しています。つまり、必
ずしも正社員である必要はなく、幅広く、雇用期間を定めないフルタイム勤務の労働者への転換を推進すれ
ばよいということになります。
もしくは、「短時間正社員」への転換措置を講ずることでも法の趣旨に合った取り組みに該当しますが、そ
の場合には、短時間正社員への転換後に「正規型のフルタイムの労働者」に転換できる制度を設けることが
望ましいとされています。

3.通常の労働者への転換制度とキャリアアップ助成金「正社員化コース」の活用
(1)キャリアアップ助成金「正社員化コース」とは
有期雇用労働者等※を正規雇用労働者に正社員化した場合に、事業主に対して助成を行う制度です。
※有期雇用労働者等・・・有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者を含む、いわゆる「非正規雇用労働者」を指します。
(2)キャリアアップ助成金正社員化コースの金額
①支給額 ②加算額
1 人当たりの助成額は以下の通りです。 1 人当たりの加算額は以下の通りです。
(3)助成金の受給要件
助成金の受給には、以下の3つの条件を満たす必要があります。
(4)その他の要件
・対象となる労働者
・正規雇用労働者の定義と対象となる要件
・対象となる事業主
などの要件が」別途定められています。キャリアアップ助成金を活用しようとお考えの方は、詳細につい
て、担当の営業までお問い合わせください。

パート・アルバイトに雇用保険加入
~政府は、週20 時間未満働く短時間労働者も雇用保険に加入させる検討に入る!~

■財務省が財政制度等審議会歳出改革部会で雇用保険の適用拡大の検討を提案、厚生労働省も審議会で
議論へ
雇用保険は現在、雇用形態にかかわらず週の所定労働時間が20 時間以上で、31 日以上の雇用見込みがある
場合は原則として加入します。2021 年度は230 万事業所に適用され、4400 万人が被保険者でした。
保険料は、労使が指定の料率分を負担します。令和4 年度は、一般事業の場合、①労働者負担が6/1000、②
事業主負担が9.5/1000、と雇用保険料率は15.5/1000(①+②)となっています(詳しくは、パートナーニ
ュース4 月号参照)。
厚生労働省によると週20 時間未満の労働者は、2018 年度時点で
550 万人と推計されています。雇用保険に加入できない場合、離職
後の失業手当や、育児休業中に賃金の最大67%が支給される育児休
業給付、教育訓練給付などの対象から外れています。
また、複数の職場で雇用されているパート・アルバイトの中には、
合算すれば労働時間が週20 時間以上になるのに、雇用保険に加入
できていない人もいます。
そんな中、財務省は4 月24 日の部会で岸田政権が掲げる「人へ
の投資」を進める上で、「雇用保険の適用拡大などにより、多様な
働き方を効果的に支える制度としていくことで、より多くの方が安
心して働ける環境を整備する」ことが重要との認識を示しました。
■課題は勤務時間の線引き
一方で、適用拡大に向けては週の労働時間をどこで線引きするかが焦点になります。短時間労働者を多く
雇う業界や企業にとっては保険料の追加負担になるため反対するおそれがあります。さらに、2022 年度の失
業給付は保険料収入7900 億円に対し、1.4 兆円の給付となる見込みで、収支は均衡しておらず、2023 年度は
料率を0.2%分引上げています。適用拡大にあたっては、保険料率の水準も検討課題になります。
<社会保険料「30%時代」へ>
健康保険組合連合会は20 日、2023 年度の健康保
険の平均料率が9.27%になる見通しだと発表しま
した。1400 ほどある健保組合は主に大企業の従業
員と家族ら約2800 万人が加入します。会社と従業
員が折半して負担する健康保険料率の平均は
9.27%と最も高く、2022 年度比0.01 ポイント上昇
しました。
横ばいの介護保険料率(1.78%)と、料率が固
定されている厚生年金(18.3%)を足すと、医療・
介護・年金で合計30%近い水準となります。
中小企業でも従業員や家族4000万人が加入する
全国健康保険協会(協会けんぽ)は平均の健康保険料率が10%でした。介護の1.82%と年金の18.3%とあわ
せ2 年ぶりに30%台となりました。

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[2023年5月25日]